ぶっちー、
こんにちは。
ご機嫌いかがでしょうか。
五月病になっていませんか。
こちとら、長崎に来てからすっかり車生活です。
保育園の送り迎えや買い物をはじめ、ちょっと仕事しにスタバや図書館へ行くにも車。
横浜では毎日かなり歩いてたんだけど、今は1日あたりの歩数が10分の1くらいになったんじゃないかな。
これじゃアカン!と思い自転車、それも生まれて初めてロードバイクを買いました。
厳密には「限りなくロードバイクに近いクロスバイク」なんだけど、まあ細かいことは気にせず。
どう、カッコイイでしょ?
37歳男(二児の父)、色鮮やかなピンクレッドを選びました。
実はこのピンクレッドちゃん、初見で「絶対にこれがイイっ!」と一目惚れしたわけではなくて、最初は同じモデルのマットブラックに心惹かれてた。
誰がどこからどう見てもカッコいい、おそらく一番人気のマットブラック。
買うなら絶対にこれやん、って思ってた。
……が、しかし、近所の自転車屋さんにお目当てサイズの在庫がなくて、店員の若い兄ちゃんが試乗用に持ってきてくれたのがこのピンクレッド。
「まあ、サイズと乗り心地を確かめるだけだから」と思って乗ってみたらアラ不思議、この珍しい色がだんだん魅力的に思えてきてしまって。
マットブラックは10日くらいで取り寄せできます、と言われたんだけど、ちょっと考えます、と行って店を後にした。
その10分後、保育園に娘を迎えに行く前に国道沿いの定食屋でちゃんぽんを食べながら「まあでも、やっぱり黒かなあ」とぼんやり考えていたら突然、さっきのピンクレッドちゃんが話しかけてきたわけ。
「お前、つまんねえ男だな」
え、誰?あ、さっきのピンクレッドちゃん?
お前?お前って誰のこと?
え、俺?俺のこと?
俺のこと、つまんねえ男だな、って言ったの?
ねえ言ったの?言ったのね?
「そうだよ、お前だよ。絵に描いたようなつまんねえ男、それがお前。マットブラック、あいつは確かにカッコいいよ。誰がどこからどう見てもカッコいい。でも、お前はそれでいいの?誰がどこからどう見ても一番カッコいいやつを真っ先に選ぶ、そんな無難で安パイな石橋叩きまくりの人生でいいわけ?」
むむ。
「昔のお前はさ、もう少し気概があったよ。気取ってピンクのシャツとか着てたし、iPhoneもターコイズブルーとか選んじゃって。このブログ始めた頃も金髪だったじゃん。でも最近のお前ときたら、洋服からスマホまで何もかも黒、白、グレーの三色展開。ああつまらん。どうしてそんなに色褪せちゃったのさ?」
(俺、黙ってちゃんぽんをすする)
「歳を取ると冒険心が徐々に失われていく、それはわかる。一般論としてね。で、一般論の範疇に自らを率先して収めにいく退屈極まりない男、それがお前。たかが自転車というなかれ。こういう日常生活の相棒選びから全ては始まっていくんだよ。家具、マグカップ、コーヒーミル、水筒、バッグ、カードケース、洋服、パンツ、靴下……もっと攻めようよ、男ならさ。別に俺っちを選んだところで値段が上がるわけじゃねえんだ。マットブラックの野郎と同じ、ポッキリ税込9万3500円。そりゃ、自転車としては決して安くないよ。お前みたいなビギナーのパンピーにとっては超高級品。それは俺っちも重々承知してる。でも考えてもみなよ。俺っち、最新のiPhoneより安いんだぜ?あんなちっぽけなマーケティングの産物より、その気になれば大村湾一周できる俺っちの方が安いんだぜ?大村湾の面積、琵琶湖の半分もあるんだぜ?お買い得にも程があるでしょ。お前が今使ってるスマホ、何だっけ?ああ、メルカリで買ったモトローラの中古スマホ、1万2000円ね。イイじゃん。みんながiPhone買ってるのを横目に、お前はスマホ代10万以上浮かせたわけでしょ。その10万円で俺っちを買いなよ。攻めようぜ。誰がどこからどう見てもカッコいいマットブラックの野郎か、それとも他に類を見ないカラーリングの俺様ピンクレッドか。答えはもう出てるでしょ?」
いや、でも俺、別にみんなと違うものとか珍しいものを選びたいわけじゃなくて、ただ自分が好きなものを選びたいんだけなんだけど……
「わかるよ。わかるけど、お前が言う”自分が好きなもの”にはもう既にさ、”他の人が持っているかどうか”ってのがひとつのパロメータとして含まれちゃってるから。他の人が持っているかどうか、がお前の好き度に影響を与えちゃってるわけだから。俺っちが言ってることわかるよね?お前、心のどこかで”ピンクレッドなんて選んじゃう俺、イケてるじゃん?”とか思ってるわけじゃん?他の人とは違う価値判断のモノサシを持ってる自分に酔ってるわけじゃん?あのね、他の人とは違う価値判断のモノサシを持ちたいっていう願望、それこそパンピーの証だから。どこにでもいるような女の子にはなりたくない!って思ってる女の子はどこにでもいるんだよ。俺っちが言ってること、わかるよね?ねえわかるよね?」
確かに。でも俺、別にそこまで込み入った話をしてるわけじゃなくて、ただ何色の自転車を買おうか迷ってるだけなんだけど……
「え、まだ迷ってるの?嘘でしょ?ここまで俺っちの話を聞いて、まだ迷ってるの?ハハハ、冗談キツイっす先輩。そのナノサイズの脳ミソをフル回転させながら考えて欲しいんだけど、お前が前々から欲しいと思ってたマットブラックの野郎、あいつがこんな風に話しかけてきたことあった?一度もないでしょ?あいつは確かにカッコいい。カッコいいけど、ただ黙って佇んでるだけ。ドヤ!って感じで。何ていうのかな、愛嬌がないんだよね。話が全然面白くないイケメン。ただ黙って佇んでるだけでモテると思ってるナルシスト。いや実際モテるんだけど、そのモテは表面的なものだから。いや、別にひがんでるわけじゃなくて」
(俺、モトローラの中古スマホで時刻を確認)
「ていうか俺っち、確かに色はちょっと変わってるけど、そもそもGiantっていう台湾の超人気メーカーの、まあまあ人気車種のほぼ最新モデルなわけ。そんな俺っちを選んでる時点でお前は充分ミーハーというか、既に”みんなが良いと思うもの”を選んでるわけ。大体お前、ニューバランスのスニーカーにノースフェイスのリュックってもう、個性の欠片もないじゃん。いや、別にいいのよ、そんなところで個性出さなくて。このブログで充分個性出してるから、お前」
どうも。
「世の中で”個性”なんて言われているものの大半は結局、単なる記号なわけよ。俺っちから見たら誤差みたいな、もうほんの小さな差異に無理やり意味を見出して、個性だ個性だって騒いでるわけ。というか俺っち思うんだけどさ、本来的な意味での個性っていうのは人に自慢できるようなものじゃなくて、むしろ隠したくなるような恥ずかしいことだったりすると思うんだよ。たとえば乳輪の大きさが左右で違うとか、あるいはめっちゃ包茎とか、いきなり下ネタばっかで申し訳ないけどさ、そういう生まれ持った身体的特徴とかを個性というんじゃないのかね?まさに個体の性質、というか。そんなの、わざわざ追い求めるようなものじゃないし、選べるものでもないじゃん。個性ってそんなにありがたいものかね?って超個性的な俺っちが言うのもアレだけど」
(そろそろ保育園行かなきゃ)
「いや、俺っちも流石に飽きてきたからそろそろ終わりにするけどさ、わかって欲しいのは、俺っちはお前のナノサイズの脳内で既に人格を持ってるってこと。ただの自転車じゃなくて、もう”相棒”になりつつあるってこと。相棒、これからよろしくな」
というわけで翌日、ピンクレッドちゃんを買いました。
ICU時代以来となる、自転車を主要な移動手段とする生活のスタートです。
武蔵野から大村湾までっ!走れメロスッ!
なぜかジョジョ風になっちゃいましたが、そんな気分です。
では、今日もひとっ走りしてきます!
2024.5.15
西陽さす自宅のウッドデッキにて
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